(ミュージカル・キャッツの童話)

 

 これはある猫たちの特別な日のお話しです。

 

 

 人間たちが仕事とか生活とかしているこの街の、見知らぬところ、そこに猫たちは住んでいます。

 

 その街は、高い高いビルがずらりとならんでいて、いろんな照明が光っていて、車も人もたくさんいるので、夜でもとてもにぎやかです。けれど、大通りから横に入って、せまい道を行き、ビルとビルの間をとおりぬけていくと・・・しんと静まり返った、ビルのうら側の空き地が見えてきます。

 そこに猫たちは住んでいます。そこに人間はいません。それは猫たちにとって、とても都合の良いことなのです。自分たちが自分たちらしくいられるからです。

 

 今日は、猫たちの四年に一度の特別な日です。この街に住む猫の中から、一匹、天に召される猫が選ばれる日なのです。天に召される猫は、本当に心が美しく価値がある猫、そのような猫が選ばれます。

 皆、気持ちをソワソワさせながら、ここに集まってきます。それで、いつの間にか、その空き地は、猫たちの歌うような声でいっぱいになっていました。

 

 まず初めに、とても愛想のいい「電車猫」という猫がこう言い出しました。

「やあ、僕はみんなをいろんなところに連れてゆくことができる。みんな僕を頼ってくるよ。人間たちの作った荷物を運ぶ電車、それをうまく利用してまぎれこんで乗車して、ガタンゴトンとゆられながら遠い知らない街へと行く。きっとみんな、僕と一緒にそれを味わうなら、世界の広さを知ることになって、日ごろの小さなストレスなんてふき飛んでしまう。

 その、しげき的な旅のお手伝いをし、みんなを楽しませる、それが僕の喜びなんだ。僕は心からそう思っている」

 

 電車猫がそう言うと、まわりの猫たちは、「そうだそうだ、いいぞ、みんなお前のおかげで楽しんでいる、お前は本当に価値のある猫だ!」と、はやし立てるのでした。

 

 このように、自分がいつもやっていることと、自分の価値と、心の美しさをアピールします。そうすることで、天に召されたいと思っているのです。

 

 そんな中、一匹、真っ白な毛の、まだ大人でない仔猫がいます。今日初めて、この特別な日にここに来ることができました。仔猫は、ここに住む猫たちの長老の猫に、つれてこられました。それまでは人間に飼われていたのです。それで、そこでたくさんのことを学んでいたので、まだ小さい仔猫なのに、「どの猫がどれほど価値があるか、どれほど美しい心を持っているかを知ることが出来る」と、長老猫にスカウトされてきたのでした。

 

 仔猫は電車猫を見て、とても愛想のいい猫で、みんなのために喜んであんなにがんばっているってすごい、と思いました。

 

 仔猫がそう思っていると、次の、二匹の猫がみんなの前に出てきました。

 

 つづく