この二匹のオスとメスの猫は、泥棒猫です。人間の家から、気づかれないように、ちょっとずつ美味しいものを持ってきます。

 

 メス猫が言いました。

「あたいたちはどんなところにでも忍び込んで、お肉や魚、デザートのフルーツやお菓子を持って来ることができる。どんなところでもさ。みんなが行くことの出来そうにない高いところも、あたいたちは平気で飛びついて持って来る」

 オス猫が言いました。

「おいらたちはこの町にある家のことを全部知っていて、どこでどんな料理を作っているか、いつどんな料理を作るかを知っている。だから、みんなが欲しいものをいつでも持って来ることができるのさ」

 

 このオス猫とメス猫は、すばしっこくて、物知りです。

 オス猫とメス猫は一緒に言いました。

 「食べたいものを何でも言ってごらん、持ってきてあげる。あたい(おいら)たちにできないことはないからね!」

 

 すると、まわりの猫たちは、「いいぞいいぞ!こんがりジューシーなハンバーグを持ってこい!」とか「出来立てのパンケーキを持ってきてちょうだい!」などと、嬉しそうに、自分たちの食べたいものを口々に言うのでした。

 

 それを見ていた、長老猫に連れてこられた白毛の仔猫は、「この二匹の泥棒猫は、みんなのために美味しいものを持ってきている。だからみんな喜んでいるんだ」と思いました。

 

 

 仔猫がそう思っていると、一匹の雄猫がみんなの前に出てきました。その雄猫はとても強そうで、それまで騒がしかったこの空き地の広場が「しいいん」と静まり返りました。

 

 つづく