大きな黒い体をした雄猫です。ゆらりゆらりと歩いてきますが、その一歩一歩にまわりの猫たちはビクッとします。それほど怖いのです。

 その雄猫は皆の前に出ると立ち止まり、四つの足を真っすぐに立て、ライオンのように吠えました。それを見たまわりの猫はいよいよ怖くなって、その場からぴゅーと、いっせいに逃げていきます。

 

 空き地の広場には、黒い雄猫と、長老猫と白毛の仔猫だけしかいなくなりました。

 

 このようにこの雄猫は皆に怖がられています。でも、実は、この雄猫のおかげで、他の種類の動物はこの空き地に入ってくることができません。それでこの空き地は安全に守られていたのです。

 

 白毛の仔猫は思いました。「この大きな黒毛の雄猫は、わざとこわいふりをして、皆の生活を守っているんだ」

 そして白毛の仔猫が長老猫を見ると、長老猫は、そのとおりだという感じにうなずくのでした。

 

 しばらくすると黒い雄猫は、またゆらりゆらりと歩き出し、そこを離れて行きました。

 

 

 

 「しいいん」としたままの空き地でしたが、あちらこちらから猫たちが様子をうかがっていて、その黒い雄猫がいなくなったことがわかると、そろりそろりとまた集まり出しました。

 

 そんな中、一匹のコミカルな猫がサっと皆の前に現れました。

 

つづく